ここではステロイド外用薬(皮膚に塗る薬)について書いています。
ステロイド内服や注射の場合は副作用の内容は異なります。お気をつけください。
ステロイド軟膏の副作用はほとんどが一時的
まずアトピー治療に使うステロイド軟膏を使った時の副作用のウソホントをまとめてみました。
副作用 | |
肌が黒くなる | ✕ |
骨がもろくなる | ✕ |
一度使うとやめられない | ✕ |
皮膚が薄くなる・多毛 | 一時的 |
赤ら顔、酒さ | ◯ |
にきびやブツブツ | 一時的 |
緑内障 | ◯ |
副腎機能不全 | 一時的 |
副作用の多さに驚いた人もいるかと思いますが、多くがウソ、そして一時的に起こる場合がほとんど。そしてそれらは正しい塗り方をしたら起こらないのです。
以下で説明しますね。
❝副作用❞というデマ
「肌が黒くなる」は完全なウソ
これはステロイド軟膏を塗ったからではなく、アトピーの炎症を長く放置する(もしくは症状に合った薬を塗らずにいつまでも掻いている)と色素沈着がおきます。そのため肌が黒くなるんですね。
アトピーに限らずにきびやあせもにも言えることです。治療せずずっと膿んでいる状態だったり掻きむしっていると、跡になったり黒ずんだりしますよね。
炎症に合った強さの薬を塗って、症状を早く収めることが本当に大事です。
ちなみに、「骨がもろくなる」もウソです。
なお,ステロイド外用薬は骨粗鬆症に対するリスクにならないという報告が多い
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021
一度ステロイドを使うと一生手放せない?
これもウソです。なぜならアトピーは治らない病気ではないからです。
もちろん治療が長期になることが多いですが、強い薬をたくさん塗る時期は短期間です。その後症状に合わせてだんだん弱い薬に変え、量も減っていきます。
絶対に自己判断で薬をやめないことです。見た目はきれいな肌でも内部で炎症が起こっています。
ステロイドを使う時はお医者さんとこまめに会うことをお勧めします。
皮膚萎縮や多毛は一過性
【皮膚萎縮】…皮膚が薄くなり弱くなること。これはほとんどが一時的。強めのステロイドで湿疹を短期間で治す→弱いステロイドに変え様子を見る方法をとれば回復します。
アトピー性皮膚炎診療ガイドラインにも載っています。
【多毛】…塗っている間はうぶ毛が濃くなることがあります(とくに子供)。
ただ治療が終わればもとに戻ります。
毛細血管拡張、赤ら顔
【毛細血管拡張】…肌に赤い線が目立つこと。こちらも強めのステロイドで湿疹を短期間で治す→弱いステロイドに変え様子を見る方法をとれば起こらないと言われています。
【赤ら顔、酒さ】…顔に強いステロイドを長い期間使うと起こることがありますが、基本的な原因は不明。太陽の光や化粧品などの刺激、ホルモンの影響など、まだ十分に解明されていませんがこれらに対する治療法はあります。
皮膚感染症のリスクは高くなる
ステロイド軟膏という薬は、皮膚の免疫を抑制します。するとにきびなど細菌等による感染症を引き起こす場合があります。例えば、水いぼに塗ると悪化する可能性があると言われています。
ステロイドを塗っても悪化する場合はすぐお医者さんに相談しましょう。
このあたりはきっちりお医者さんに判断してもらいたいところですね!
まぶたに塗る場合は要注意!
【緑内障】…目の周りに塗ると起こる場合がある。かならず部位に合った種類のステロイドを塗りましょう!
副腎機能不全について
【副腎機能不全(ふくじんきのうふぜん)】…左右腎臓の上にある副腎というところからホルモンが正常に出なくなること。倦怠感、低血圧、低血糖などの症状が出ますが、こちらも一過性です。またアトピー治療開始時に全身にステロイドを塗布すると一時的に起こる場合がありますが、症状が治まり薬も弱いものに変わっていけばこのような副作用も治まっていきます。
十分な量を使用すれば,湿疹病変は速やかにコントロールされ,ステロイド外用薬の塗布量や塗布範囲は速やかに減少し,ステロイドのランクも下げることができる.すなわち,ステロイド外用薬を適切に使用すれば,日常診療における使用方法では全身的副作用は通常起こらない
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021
なぜ世の中こんなに「ステロイド=悪」となったのか
やはりテレビの影響は強い
1990年代からテレビでアトピー性皮膚炎の特集をするようになり、そこでの誤った報道で、ステロイド=悪のイメージが蔓延。
ステロイドを使ったら副作用が怖い!!というアトピーの人たちが増えたようです。
その後、マスコミがどんどん「ステロイドは悪」「脱ステロイド療法」の情報を流し、うわさや口コミが広がり、悪徳商法まがいのアトピービジネス(民間療法、健康食品販売、効果があるのか疑われる化粧品など)が爆発的に増えました。
【アトピーの名のつく商品に弱い】
ボディソープでアトピー完治!?
「ステロイドは副作用があって怖い薬」という話は噂が一人歩きをして拡大解釈され「世論」として定着しました。ステロイドで顔を潰された…という本のタイトルは抜群に巧い表現のキャッチフレーズですが、実態は一方的な「治療放棄」で症状が悪化しただけです。
日本アトピー協会
ステロイドはいろいろなところで使われている
そもそもステロイドはアトピー性皮膚炎だけに使われている薬ではありません。アトピー以外のいろいろな皮膚炎や皮膚病、リウマチや膠原病、喘息やアレルギー疾患、いろいろな抗癌治療など炎症性疾患のほとんどでステロイドが使用されています。
皮膚に直接塗るタイプの外用薬は、血中にステロイドがほとんど入らず、内服するよりもずっと全身性の副作用は少なく安全です。
ステロイドが怖い、なるべく使いたくない。なぜそう思ってしまったのでしょうか。
子供は特に、薬を使わずグジュグジュの肌で夜も眠れない日を過ごさせるより、信頼できるお医者さんのもとで、適切な強さの薬を適切な量で適切な期間使うことが大事だと思います。それが短期間で治療完了することに結びつくと思っています。
とは言っても、すり込まれた情報、常識を変えることはなかなか難しいですよね。
おちゃこもずっとステロイドには消極的でした。
薬は薬ですから、副作用があるのは当たり前。なるべく使いたくないです。
ただ、どんな副作用なのか、それはずっと続くのか、を今一度考えてみてもいいかもしれませんね。
今後も薬をはじめ食事や寝具などにも気をつけてアトピーと向き合っていきたいと思っています!
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